第一歩目を踏み出し終える前に、名を呼ぶ声があった。
「あ、そうだ、サリナ」
「はい?」
振り返るサリナに、フェリオはやや照れたように口ごもりつつ、こう言った。
「歳も一緒なんだしさ。呼び捨てでいいし、敬語じゃなくていい」
もう会わないかもしれないけど、
と言いかけてやめたフェリオに、サリナはやはり笑顔だった。
第10話