彼の前には風の峡谷から帰還したサリナたち4人がいた。
各々椅子やら工具箱やらに腰掛けてコーヒーを飲んでいる。
無骨なテーブルの上にはその場に似つかわしくない可憐なケーキの類が、所在なさげに点在している。
愛弟子が帰った時、シドは自分の好物を買ってきたことを真っ先に賞賛した。風鳴石のことよりも前に。


「サ、サリナ、髪の毛すげえ撥ねるんだな」
「タオル、サリナ、おっさんみたいだぞ」
 はっとして、サリナは頭に手を持っていきかけた。
すんでのところで皿を持っていたことを思い出し、
テーブルに置いてからタオルで頭を隠して、彼女は悲鳴を上げながら部屋へと駆け戻った。


第15話