「さすが我が愛しの女将!」
 顔にかけた布を吹き上げては戻すという遊びを繰り返していたカインが、がばと身を起こした。
その額にエメリの手刀が炸裂した。カインはぱたりとテーブルに突っ伏した。
「名前で呼びなって言ってるでしょ」
「ご、ごめんなさい」
 そんな兄の姿に、弟は頭を抱えるのだった。







「あの、例えば私とカインさんで演舞とか獣使いのショーをする、とかは?」
「うわ、勇気あるなサリナ」



サリナたちはそんな会話をしているふたりのそばを通り過ぎようとした。
通り過ぎる時、サリナは気づいた。
毛皮屋と話しているのは、昨日彼女にぶつかって悪態をついた少年だった。
 毛皮屋と少年も、金稼ぎの算段をしながら通り過ぎようとする
4人組に気づいてふいとこちらを向いた。
ちらりとサリナを見て、少年は一瞬目を見開いたようだった。
しかしすぐにこちらから視線を外し、店の中へと入って行った。


第18話