噴水の前には祭壇が設けられ、街でとれた農作物の数々が供えられている。
祭壇の中央には90個の米俵と、奉納手選定祭で活躍した、
あの紺碧色の球体が据えられていた。
住民たちはそのほとんどが噴水広場や目抜き通りに集まり、
奉納手が現れるのを待ちわびていた。









かくして彼女の顔は引きつったような表情で固まっていた。
「うは。なんて顔してるんだあいつ」「はっはっは。緊張してんなー」「もともと上がり症ですしね」
 近づいてきたサリナを見て、3人は吹き出した。声を上げないのに必死だった。エメリも苦しそうだ。
「あの子、意外と衣装は似合ってるのに、ひどい顔ね」「あとで言ってやってください」





冷たい光を放つ月を背景に、七色の光が漆黒の夜空を彩る。
その幻想的な光景に、サリナは夢の中にいるような心地だった。



耳元で囁かれたフェリオの声に、サリナはどきりとして振り返った。
「え、あっ……え?」
 間近にフェリオの顔があった。花火の音で声が通りにくいためだったが、
サリナは顔が熱くなるのを自制出来なかった。花火の色で悟られないようにと、彼女は願った。
「スペクタクルズ・フライ――兄さんの偵察用の虫が戻ったらしい。掏りが見つかった」










4人は同時にアシミレイトした。真紅、紫紺、銀灰、翠緑、4つの光が輝く。
あたりは途端に昼のような明るさになった。
膨れ上がった4つの光に、クロイスの足が止まる。彼は唖然として立ち尽くした。
やがて光が収まり、リストレインの鎧を身に付けた4人の戦士がその姿を現した

「ねえ、もうやめよう?」
 かけられたサリナの声に、クロイスはその場に膝をついた。


第20話