サリナがセリオルの、フェリオがカインの部屋の扉をノックした。いずれも返事は無かった。
サリナはそっと、フェリオは勢い良く扉を押し開いた。
 ふたりが見た光景は同じだった。それぞれの部屋の主はベッドに腰掛けてがっくりとうなだれていた。
違いはそこにいる男の髪が黒いか赤いかくらいのものだった。



「……重症だ」
「……重症だね」





「なになに、エメリさん、どうしたんですか?」
「ふふふん」
 うろたえるフェリオと不思議がるサリナに意味ありげな含み笑いを投げかけ、
エメリは何も語らずに階段を上がっていった。





言いながら、カインはクロイスの頭をわきの下に抱えて締め付け、
拳をぐりぐりと押し付けた。帽子が落ち、クロイスが悲鳴を上げた。
「いだだだだ! わりい! 悪かった! もう言わねえよ!」
「いーや許さねえ。お前は絶対また言う。二度と言わないと天に誓え」
「誓う! 誓います! だから離せ! いや離して下さい!」
 そんなことをしているふたりを、セリオルとフェリオは溜め息と苦笑とともに眺めていた。
ふたりは顔を見合わせて、やれやれと呟いた。


第22話