「学究街区……」
 宿の待ち合いで王都の地図を眺め、サリナは低く呟いた。
 金獅子通りと蒼龍通りに挟まれた、王都北東部。
そこは学究街区と呼ばれ、教育機関や各種研究施設が集まる地区だった。
 王立幻獣研究所――学究街区の一角に、その名はあった。





「何してんだ、サリナ」
 掛けられた声に振り返ると、クロイスだった。
彼はサリナの隣に並んで立ち、壁の地図に目を遣った。
「幻獣研究所、か」










彼はハイナン島から持って来た服ではなく、リプトバーグで購入していた大陸風の服を身に付け、
いつもの眼鏡ではなく色の入った眼鏡を掛けていた。
髪も束ね、一見したところでは彼本人であるとはわかりにくい姿に変装していた。
王都で目立たず、またセリオル・ラックスターであると、彼を知る者に気付かれないための対策だった。

サリナとクロイスは顔を見合わせた。
セリオルの顔には、満足げな表情が浮かんでいた。


第26話