セリオル・ラックスター。その名を、ヴリトラは何度も耳にしたことがあった。
この時代に現れた希代の天才であると、彼はその名を記憶していた。
確か史上最年少で竜王褒章を受章したのもセリオルだった。
 その授章式で、ヴリトラはセリオルの顔を覚えた。
まだ13歳だった少年は、幻獣と天文学に関する論文で科学研究者として
最高の名誉を得た後、王立幻獣研究所へ入ったはずである。









「ほう……」
 王は顎髯に手を遣った。髯を撫でながら、彼は面白がっているような目でサリナを見つめた。
「エルンストに娘がいると聞いたことはあったが。
そうか、そちがな。そういえば、エルンストの姿を随分見ておらぬ。あやつは元気か?」
 その問いかけにサリナが唇を噛んだのが、ヴリトラには意外だった。







「俺たちの両親――ルーカス・オーバーヤードとレナ・オーバーヤードは、
ゼノアに殺されたんだ。あんたは知らねえだろうけど」

「シド……シド・ユリシアスか。それにルーカスと、レナ。いずれも聞いた名だ」
 顎髯を触りながら、ヴリトラは思考を続けた。








第28話