先陣を切った彼が通路に入ると、踊り場と通路の境界、
さきほどまで壁があったところに薄い緑色の、半透明の膜のようなものが一瞬現れた。



「まーまー。なんとかなるって。そう重っ苦しく考えるなよ。最悪その飾りがあれば出て来れるんだろ?」
 カインの言葉はいつもの調子と変わっていなかった。
階段の数段上にいた彼は踊り場に下りてきて、サリナの肩に手を置いた。
そのまま進んで、カインはセリオルの隣りに立った。








「これが、封印?」
「恐らく」
 サリナの疑問に答えながら、セリオルは円陣の前まで進んだ。
セリオルの身長を遥かに超える高さに円陣も魔法文字も存在していたが、
彼は顔を上へ向けて懸命に解読しようと試みた。



「はっはっは。なんだ皆。ちょっとばかし冷てえな。泣いちゃうぞ」
「お前、可哀想な男だな……」



 唯一カインの言葉に反応してくれたのは、意外なことにアーネスだった。
カインは静かに涙した。


第29話