「マスター! 世話んなる……ぜ……」
 マスターに答えようと大きく手を振ったカインの声が、急速に勢いを失った。
彼の目に、信じがたいものが飛び込んできたからだった。

「いらっしゃいませー!」

 宿を訪れた客に大きな声で威勢の良い挨拶をし、ピシッとしたハイナンの給仕服に身を包み、
それに相応しい帽子をかぶり、天井の高い食堂で他の客の食事を運びながらこちらに頭を下げ、
その瞬間に石にように固まったのは――
 あの野盗団の、頭領だった。






第93話