かつて――エリュス・イリアで大きな戦争があった。

生命の源、“マナ”を占有しようとしたヴァルドー皇国。

ヴァルドーによる隣国への侵攻をきっかけとした世界大戦は激しさを増し、

狂皇と呼ばれたパスゲア・フォン・ヴァルドーの猛進は留まるところを知らなかった。

マナの枯渇を憂慮したのは、エリュス・イリアの守護神と崇められる“幻獣”たちだった。

彼らは美しく気高き水晶――“クリスタル”へとその身を変え、

心に清らかな光を宿したイリアス王国の勇王、ウィルム・フォン・イリアスに力を与えた。

幻獣の加護のもと、ウィルムと6将軍はヴァルドー皇国を撃退し、世界統一を達成した――

 

それから400年の後。

幻獣は人の前から姿を消し、守護神としてエリュス・イリアを見守っていた。

マナを生み出す“世界樹”は健やかにその枝葉を広げ、生命は瑞々しい力を湛えた。

内乱の末にいくつかの自治区を持つことになったイリアス王国は、

賢王ヴリトラの治世のもと、民族同士の共存と調和を実現した豊かな時代を迎えていた。

人々は知らなかった。

王都の一角で、世界に仇なす不穏な闇が生まれていることを。