第117話

 風水のベルの音が、凛と響く。そのたび、闘志に満ちた紅のマナがアントリオンへ飛び、標的を変えようとする魔物の顔を自分へと引き戻す。巨大な血の色のアリジゴクは怒りの声を上げ、琥珀色に輝く光を纏う騎士へ攻撃を仕掛ける。
「埒が明かないわね……」
 舌打ちと共に、アーネスはアントリオンの触手を盾で弾き返す。魔物は何度も繰り返されるこの攻防に、苛立ちの声を上げる。
 戦闘は膠着状態に陥っていた。アーネスたちの攻撃は、敵に一切通じなかった。一方、アントリオンはアーネスの挑発によって標的を彼女だけに向けることを強いられ、その強固な守りの術の前に突破口を見出せないでいた。
「いつまでも鬱陶しい者どもよ!」
 おぞましき姿の魔物は、忌々しげにアーネスたちを罵った。それと同時に、アントリオンはその触手を大きく振りかざし、地をなぎ払うように振り抜いた。だがそれはこちらへ向けての攻撃ではなかった。
「……空間侵食か!」
 それは闇のマナの力だった。セリオルは顔をしかめた。アントリオンの触手の軌跡にあたる空間が歪み、暗い闇が広がる。そこから、全身を闇色に染めた魔物が次々に出現した。
 アーネスは奥歯を噛み締めた。現われたのは通常のアントリオンをはじめ、砂漠の魔物たちだ。ただし、闇のマナの力に侵食され、その力は狂気と共に増大しているだろう。そして何より厄介なことに、敵の数が多すぎる。
「クックック……いかに貴様といえど、この数ではしのぎきれまい」
 魔物の嘲笑。面倒な状況に、アーネスは魔物を睨みつける。
「お前は、わかっていないようだな」
 だがその声は、窮地に立たされた者のものではなかった。むしろ彼女は挑発的に、増援を呼んだ魔物に剣を向けた。
「増したのは力だけか。その頭、所詮は虫けらということだな」
「……なんだと?」
 アントリオンは怒りを顕わにし、咆哮を上げてアーネスに攻撃を仕掛けた。噴出した闇のマナを纏った攻撃。だがその巨大な鞭のような触手が振るわれる前に、いくつものマナの光が戦場を駆け抜けた。
 翠緑の光が走る。典雅なるヴァルファーレのマナは、風の刃となって巨鳥の群れを切り裂いた。漆黒の闇が、美しい碧色の風に散る。旋風は嵐なり、新たに現われたアントリオンの甲殻を砕いた。
「爛れの塵、不浄の底の澱となり、死へ至らしめる熱病を生め――バイオ!」
 病毒の魔法が詠唱され、その強力な殺戮力が闇の魔物を葬った。セリオルは何の傷を負うことも無く、ブラッド・アントリオンの救援となるはずだった者どもを退けた。
 純白の光が宙を舞う。優美なるカーバンクルのマナは、清めの力となって怪魚の群れを粛清した。高き跳躍から急降下し、シスララは浄化の力で闇の魔物を祓う。
「ソレイユ、準備はいい? ワイバーンピアス!」
 空色の飛竜は聖のマナに祝福され、美しい声で啼く。大きくを円弧を描くように飛翔し、ソレイユは主の後ろから高速で飛来した。シスララは純白の光を放つオベリスクランスを渾身の力で投擲する。ソレイユと槍は一体の聖なる豪槍と化し、不浄なる魔物の群れを殲滅した。
 紺碧の光が踊る。鮮烈なるシヴァのマナは、凍てつく吹雪となって泥の戦士たちを破壊する。闇に侵され、狂える怪物と化した泥人形たちは、瑪瑙の座の幻獣の冷厳なる力の前に、ことごとく打ち破られた。
「裏技・フリーエナジー!」
 水のマナを湛える2本の短剣を、クロイスは左右それぞれに投擲した。短剣は回転しながらシヴァのマナを放ち、砂牢を凍土の白に染め上げる。放たれる冷気は泥人形の闇を散らし、凍結した魔物は巻き起こる吹雪に砕け散る。
 紫紺の光が迸る。壮麗なるラムウのマナは、不遜な闇のアルカナを打ち据える鉄槌となった。激しい雷撃が宿った鞭は、雷の大蛇となってアルカナを呑み込んだ。咄嗟に自爆を仕掛けようとした魔物も、駆け抜ける迅雷の前に為す術も無く霧消する。
「ほら、行きな! 雷の獣たち!」
 カインは獣ノ箱を解き放った。雷帝の館で捕らえていたボムとドール、そして蒼霜の洞窟の青い猿たちが、炎の姿から雷のマナを得、激しい雷光へと変化して闇の魔物たちを撃滅する。激しい雷撃の放たれた轟音の後には、焼け焦げた大地だけが残った。
「いいか、覚えておけ、虫けら。私の仲間は、強い」
 アーネスは剣をアントリオンへ向け、言い放った。召喚した魔物どもを全て撃破され、アントリオンは呆然とした。
「……小癪な」
 怒りにその身を震わせ、ブラッド・アントリオンは闇のマナを放出する。それは地のマナの聖地を穢す、忌むべき力だ。
「させるか。ソイル・ジャベリン!」
 アーネスは琥珀の光を放つ剣を振るった。前方の空間に眩い大地の光が輝き、その中からマナの力を湛える土の槍が出現する。槍は広がりかけた闇のマナに打ち込まれ、その邪悪な力を退けた。
 魔物が苛立ちに咆哮を上げる。風水のベルが鳴る。無差別に攻撃を仕掛けようとしていたアントリオンは、またしでもアーネスだけに標的を絞ることを強いられた。
 怒りに燃えるアントリオンは、触手を繰り返し振るった。闇のマナを纏うその攻撃は強力だった。だが、琥珀の騎士は自らの持つ守護の力に風水術と幻獣の力を乗せ、鉄壁の守りを見せた。闇のマナは風水の力に弾かれ、地のマナによって強化された光の盾は、巨大な虫の重い一撃をしのいだ。
 アントリオンは幾度も魔物を召喚した。だがそれらは全て、幻獣の加護を受けた光の戦士たちによって撃退された。
「何度やっても同じことだ!」
 繰り返されるアントリオンの攻撃。アーネスはその度にそのすべてを防ぐ。だが、彼女はわかっていた。このままこの膠着状態が続けば、いずれ不利な状況に陥るのは、自分たちだ。
 幻獣の力は永遠には続かない。アーネス自身も、仲間たちも、徐々に消耗してきている。守りの力を使うにも限度がある。だが、敵はそうではない。今はアーネスが防ぎきっているが、そうでなければ相当に苛烈であるはずの敵の攻撃。防ぐことが敵わなくなった時、その猛威がアーネスたちを襲う。
 焦りを表に出さぬよう、アーネスは努めた。敵はブラッド・レディバグに侵食された魔物だ。さきほどはアーネス自身が侮辱してみせたが、実のところはどれだけの知能を有しているか、わかったものではない。こちらの痛い点を見抜いている可能性もある。
 アントリオンと攻防を続け、息が切れそうになるのをかろうじて堪えながら、アーネスはセリオルの様子を窺う。さきほどのセリオルの言葉が気になっていた。敵の守りを突破できるのは、自分だけだと彼は言った。
 ちょうど、セリオルはヴァルファーレのマナで闇の魔物を撃退したところだった。アーネスは見た。アントリオンが呼び出す闇の魔物を殲滅する合間に、どうやらセリオルは調合を繰り返している。アイテムから幾度もマナを取り出し、手の中で合わせて新たな力に変換する。彼だけが持つその魔法の力で、彼は何かをしようとしている。
「どこを見ている」
 卒然として、アーネスは魔物に目を戻した。だが遅かった。巨大な血の色の触手が、眼前に迫っていた。盾を上げる間も無く、アーネスは吹き飛ばされた。
「アーネス!」
 激しい痛みが全身を貫く。だが、彼女は決して声を上げなかった。砂の上を転がる。すぐに立ち上がり、絡みつく砂を払う。聞こえたのはカインの声だった。だが彼女はカインに顔を向けなかった。
「何かしたか?」
 不敵に、アーネスは唇の端を吊り上げる。それが強がりだということは、誰の目にも明らかだった。魔物の哄笑が響く。今の一撃で、アーネスのマナを吸った。それが何を意味するか、魔物はよく理解していた。敵の守りの力が、大幅に落ちたのだ。
 それでもアーネスは、盾を構える。それは仲間に示すためだった。こちらを気にするな、と。特にセリオルには、調合を続けてもらわなければならない。それが恐らく、この難攻不落の魔物を攻略する鍵なのだから。
「貴様の攻撃を防ぐことなど、さほどの労でもない」
「ほざけ、愚かな騎士め!」
 侵食する闇のマナの矢が放たれる。琥珀に輝くブルーティッシュボルトが、それを叩き落す。続けて闇の触手が襲来する。剣と盾がその侵攻を妨害する。巨大な触手がなぎ払う。闇の旋風が吹き荒れる。歯を食いしばり、アーネスはその猛攻を耐える。
「クックック……大丈夫か? 小生意気な娘め」
「ご心配には及ばない。不細工な害虫よ」
 アントリオンが怒りの咆哮を上げる。アーネスは覚悟した。護る力が落ちている。次に渾身の一撃が来れば、防ぎきれないかもしれない。振り上げられた巨大な、赤黒い触手が迫る。
「わりいがいつまでも護られてるのは、もう飽きた!」
 アーネスの目の前に、紫紺の光が舞い込んだ。激しい放電と共に、ラムウの力を操る戦士は雷の盾を生み出した。触手と盾が激突する。雷の盾は消え、アントリオンは闖入者を警戒して触手を引いた。
「カイン……」
「あんたに護られてばかりいるのは我慢できなくてよ。性格上」
 目だけで振り返って、カインは笑ってみせた。彼はわかっているはずだ。この敵は、カインには相性が悪い。元々地のマナを持っている上、闇のマナまで操る敵だ。雷のマナは、地のマナには弱い。だが、その上でカインは、魔物に向かって啖呵を切ってみせた。
「おいてめえ、虫コロ。うちの隊長に手ぇ出しやがったな」
「ふん、雷のリバレーターか。貴様など、我が敵ではないわ」
「そいつはどうかな!」
 カインは胸の前で印を結び、青魔法を発動した。風の力を帯び、敵の防御を破壊する術、震天。通常のアントリオンには有効だった魔法を、カインは強化されたマナで放った。
 アーネスは剣を支えにして、なんとか立ち上がった。既に膝に震えがきつつある。だが、ここで倒れるわけにはいかない。不利を承知で、カインが来てくれた。彼を敵の攻撃に晒すわけにはいかない。
 セリオルに視線を走らせる。魔導師は汗を浮かべて調合を行っている。闇の魔物の襲来は止まっていた。アントリオンが新たな敵を警戒しているためだ。難解な調合なのだろう。それが見て取れるだけ、セリオルの表情は厳しい。
「行くわよ、ソレイユ。トリックレイヴ!」
「弓技・曲射!」
 純白の竜騎士と紺碧の狩人が、大いなる幻獣のマナでカインの支援に駆けつけた。だが、人竜一体の乱舞も水の矢の連撃も、アントリオンに痛手を負わせることが出来ない。反対に敵は、その巨体を回転させて起こした闇の大旋風で、リバレーターたちを吹き飛ばす。
 瑪瑙の座の力を持つカインとクロイスは、まだましだった。アーネスは後悔した。敵を挑発するのが一瞬遅れた。そのせいで深刻なダメージを負わせてしまった。シスララに。
 闇の力に叩きのめされ、シスララは岩壁に打ち付けられた。聖と闇は相反する力。互いが互いの急所であり、弱点だ。だが、カーバンクルの力はブラッド・レディバグに侵されたアントリオンの闇を貫くほどには、強くはなかった。
「……ごほっ」
「シスララー!」
 アーネスは走った。幼い頃から知る、ラーダ族の娘の許へ。純白の光が弱まっている。
「ちっ……この野郎!」
「てめえ、このアリンコが!」
 カインとクロイスは怒りを力に換えて、幻獣の力を放った。雷の大蛇が暴れ狂う。竜巻となった氷塊が舞う。激しい雷撃が敵を撃つ。水と氷の矢が波状攻撃を仕掛ける。
 だが、その全てがアントリオンの前には無力だった。
「クハハハハ……なんだ、その可愛らしい攻撃は」
 戦闘が始まって、彼らはいまだに一度たりとも、敵に攻撃を成功させられていない。魔物の勝ち誇った哄笑が神経を逆なでする。
「アーネス!」
 そこに響いた、セリオルの声。アーネスは倒れたシスララを抱きながら、顔を上げた。
 翠緑の光を纏う魔導師は、その手に虹色に輝くマナを帯びていた。

 その大きな力を持つマナの流れを、アシュラウルは発見した。それは当然、そこにあってしかるべきものだった。
「ここだ、フェリオ」
 白銀の巨狼は、その場所をフェリオに前足で示した。怯えるサリナを抱え、フェリオはその場所へ移動した。その間も、サリナは小さく震えている。敵と戦う仲間たちのことが気にかかるが、今、彼の使命はサリナを救うことだ。戦闘の場へ向きかける意識を力ずくで引き戻し、フェリオは幻獣の示す場所を見た。
「これは……?」
 それは、人間の手のひらで隠れてしまうくらいの小さな穴だった。その穴から、美しい琥珀の光が漏れている。
「これが……そうなのか?」
「ああ」
 意識して見なければ見落としてしまうに違いなかった。集局点には、同じようにマナの光を湛える場所がいくつもある。それが特別なマナの流れを持つものだと認識するのは、難しそうだった。
「これは、“光脈”と呼ばれるものだ。集局点と世界樹を結ぶ、マナの脈だ」
「……やっぱり、世界樹なのか」
 考えにくいと思いながらも否定しきれないでいた、世界樹の名。それが頭の中で反響するのを、フェリオは振り払えなかった。
「……いや、でも待てよ」
 そうだ。今、アシュラウルは言った。集局点と世界樹を結ぶ、マナの脈。ということは、他の集局点にもこの光脈というものは存在しているのか? だとするなら、これまでに訪れたいくつかの集局点でも、サリナは世界樹のマナを感じていたのだろうか。今回に限ったことではないのか……?
「なあ、アシュラウル。光脈はどこの集局点にもあるのか?」
 頭の中でだけ考えていても、答えは出そうになかった。彼は幻獣の言葉を求めた。
「いや。光脈は、マナに異常を来たした集局点にのみ現われる。その異常を世界樹のマナで修復するためにな」
「……そうか、なるほど」
 フェリオの頭の中で、いくつかの情報がひとつの姿を取り始めた。あの不気味なアントリオンが吸い取った、朽ちた砂牢のマナ。それを感じ取り、駆けつけてどこかにいるはずのタイタン。同じくこの異常事態を修復すべく出現した、世界樹のマナの流れ、光脈。そこへ訪れたサリナ。
 フェリオは、結論付けた。サリナの怯えは、やはり世界樹の怯えだ。恐らく光脈を通して、世界樹はマナを奪おうとする魔物の存在に恐怖したのだろう。世界樹が意思を持っているというのは想像したことも無かったが、考えてみれば世界樹は巨大なマナの塊でもある。幻獣たちと同じように意思を持っているということも、あり得る話なのかもしれない。
「いや、かもしれないじゃないな。確定だ」
 そう言って、フェリオは光脈の近くにサリナを下ろした。少女は震え、怯えている。フェリオはその、自我を失ったサリナの額に手を当てた。汗に濡れている。その髪を上げてやって、フェリオは彼女に告げる。
「すぐ終わるからな、サリナ。今、楽にしてやる」
 その小さく震える瞳から視線を外して、フェリオは立ち上がった。アシュラウルがクリスタルへ戻る。何をすべきか、彼も理解していた。
 その時、竜巻が吹き荒れるような大きな音が聞こえた。同時に、地面が軋むように揺れた。
「シスララー!」
 悲痛な響きを伴った叫びは、アーネスのものだった。シスララが大きなダメージを負ってしまったようだ。だが、今フェリオはこの場を離れるわけにはいかなかった。葛藤が胸に広がるが、彼は懸命にそれを振り払った。大丈夫だ、向こうにはセリオルもカインもいる。
「ちょっと待っててくれ、世界樹。ここのマナは、俺たちが何とかするから」
 聞こえているはずはなかろうが、フェリオは言った。彼は光脈に向かって立ち、そして叫んだ。
「リバレート・アシュラウル! ドライヴ・ラッシュ!」
 銀灰の光が膨れ上がる。気高きアシュラウルの遠吠えが響く。力のマナが解放される。アシュラウルの背に乗り、フェリオは幻獣と一体となって光脈へそのマナをぶつけた。
 目的は、攻撃ではなかった。幻獣の大きなマナをぶつけることで、光脈から世界樹へマナを送ることだ。光脈は集局点のマナの異常――今回は著しい減少のために現れた。だからそこへ、多量のマナを送り込んだ。マナの増加を感じた光脈は、それで消えるはずだ。
 フェリオはアシミレイトを解除され、着地した。すぐに彼は振り返った。
 彼の狙いは、見事に当たった。光脈は銀灰のマナを吸収し、次第にその口を小さくして、やがて姿を消した。
「サリナ!」
 フェリオは駆けつけた。地に横たわったままのサリナの許へ。
「サリナ、大丈夫か? サリナ!」
 抱え上げ、フェリオは少女の目を見た。栗色の瞳は、光を失っているようだった。嫌な感情が胸に広がる。まさか、失敗だったのか。光脈を突然閉じたのは、サリナの意識を断絶させてしまうことだったのか。様々な考えが浮かんでは消え、フェリオは固く目を閉じる。
「……い、いた、痛いよ、フェリオ」
 耳に飛び込んだその声に、卒然として目を開く。彼の腕の中には、肩を強く抱かれた痛みに顔をしかめる、サリナの苦しそうな顔があった。
「サリナ! 大丈夫か、なんともないか!?」
「……うん、大丈夫。ごめんね、心配かけたよね。ありがとう、フェリオ」
 そう言って、サリナは微笑んだ。すぐには顔色は戻らないようだったが、いつものサリナだった。どうやら彼女の意識は、世界樹の意識の後ろに追いやられていたようだった。状況は、見えていたのだ。
「サリナ、良かった……!」
 安堵感が胸を満たす。衝動的に、フェリオはサリナを抱き締めていた。少女の身体は小さく、華奢だった。
「い、いたたた、痛いよ、痛い、フェリオ」
「あ、ご、ごめん」
 慌てて、フェリオはサリナを放した。思わずとった行動に、彼は激しく赤面した。サリナを見ることが出来なかった。
「あはは。うん、大丈夫。よし、じゃあ、やるよ!」
 声に力を漲らせ、サリナは立ち上がった。フェリオもそれに続く。
「ああ。あいつをぶっ飛ばしてくれ、サリナ」
「うん、任せて!」
 顔色も戻った。本当に良かったと、フェリオは胸を撫で下ろす。サリナは敵の姿をその視界に捉え、そして叫んだ。
「輝け! 私のアシミレイト!」