第143話

 どろどろに溶けた鉄のような灼熱した塊が、身体の内に生まれたようだった。サリナはその不快な塊が冷え、分解されて消え去ることを願った。
「またゼノアかよ」
 クロイスが吐き捨てるように言った。あからさまに嫌悪を示す態度だったが、それがエッラを満足させた。老女は唇の端を吊り上げ、怒りに燃える瞳でサリナたちを睨め付けた。
「ほら、知ってるじゃないか」
 やはりな、という口調だった。その声が神経を逆撫でするのを、サリナは感じた。彼女は必死で自制した。ここで、この沸き立つような正体不明の怒りを爆発させるわけにはいかない。拳を握り締め、サリナは耐えた。
 ふと、その肩に温かな手が置かれた。反射的に顔を上げる。僅かに怒りの熱が下がるようだった。
 美しい灰色の瞳に篝火の炎を映したフェリオが、こちらを見ていた。
 フェリオはなにも言わなかった。ただその静かな瞳が、サリナに宿った熱を僅かに冷ます。暑い日の打ち水のようだと、サリナはひとごとのように考えた。自分の心が戻ってくるようで、サリナは少し安心した。頷きかけると、フェリオも頷き返してくれた。
 サリナはエッラに顔を向けた。フェリオが肩から手を離す。
 1歩、サリナはエッラに歩み寄った。その動きに敏感に反応し、エッラはサリナに憎々しげな視線を向けた。
「エッラさん、教えてください」
「ふん。何をだい」
 手足を縛られて地面にひざまずいた姿勢でありながら、エッラはサリナをじろりと睨む。さきほどのアーネスによる尋問の恐怖も、もはや去ったようだった。
 感情を調える。息を大きく吸い、吐き出す。心臓の鼓動が速いことはどうしようもなかったが、それもなんとか抑えようと胸に手を当てる。
「ゼノアは……ゼノアはこの村で、何をしたんですか?」
 その質問に、全員の意識が集中した。その名が出た瞬間から、仲間たちの気になったのもその1点だった。
 エッラはいよいよ、胡散臭そうな顔を向けた。
「……ふん、一体どこまでシラを切るつもりなんだか……」
 呆れた様子の声に、サリナは僅かに眉をひそめた。彼女には不思議だった。エッラは何を根拠にして、これほどサリナたちを敵視するのか。
 森を涸らした悪魔の手先。エッラはサリナたちをそう呼んだ。今は豊かに茂っているように見える黒き森が、涸れたことがあったのだろうか。そしてその原因が、サリナたちにある――エッラはそう考えているのだろうか。
 エッラはこちらの表情を窺おうするように、下からジロリとサリナを睨みつける。だがそこから何も読み取れないと判断したのか、ふいと顔を背けて鼻を鳴らし、語り始めた。
「あのひとはね、この村の救世主だよ」
 サリナたちは顔を見合わせた。ゼノアにこれほど似合わない呼び方があるだろうか。だがエッラはサリナたちの反応には気づかない様子だった。
「あのひとは、涸れた黒き森を救ってくれた。あのひとが使った不思議な力で、森は何日かで元通りさ。お前たちが何を企んでたのかは知らないけどね……あのマナの涸れた森を見た時、あのひとは言ったんだよ。若い7人組の旅人が犯人だってね!」
 愕然として、サリナはエッラを見つめた。今の話が事実だとすれば、ウンブラの民からは確かに、ゼノアが救世主に見えたことだろう。それはこれまでいくつもの街で、サリナたちがしてきたことと似ていた。マナバランスの崩壊による災厄を防ぎ、サリナたちは各地の人々から感謝を捧げられた。
 それと同じことを、ゼノアがしたということか。そしてその元凶がサリナたちだと伝え、ゼノアはこの村を去ったのだろうか。
「んなわけねえだろ……」
 カインの苛立った声が聞こえ、サリナは振り返った。
「大体の話が見えましたね」
 鼻から長く息を吐きながら、セリオルがそう言った。
「自作自演、ってやつか」
 真理を突いたのはフェリオだった。自作自演。その言葉を、サリナは胸中で反芻した。
 確かに、そう考えるのが最も自然な流れだった。エリュス・イリアのマナバランスを崩壊させたのは、他ならぬゼノアだ。その影響の出たウンブラを自らの手で救うことで、ハイドライトに最も近いこの村を、自らの意のままに操れるように仕向けた――そんなところだろうかと、サリナは想像した。
「でも、まさかゼノアも、こんな村の連中に俺たちをやれるとは思ってねーだろ」
 うんざりした様子のクロイスがそう言った。
「だからこそ、寝込みを襲わせたんでしょうね」
 剣を鞘に収めたアーネスが応じた。
「私たちを倒すことが目的だったのでしょうか……」
 シスララはやや悲しげな表情だ。村人を操り、暴力へと駆り立てようとしたゼノアに対してと、その結果起こった今夜の事件とに、彼女は胸を痛めていた。
「私たちを、ハイドライトに近づけさせたくなかったのかな」
 そう言いつつ、サリナは言外にシスララの言葉を否定した。いくら寝込みだったとはいえ、それだけで自分たちを退けられるとは、ゼノアも考えてはいないだろう。事実、サリナたちは大して労せずして、村人たちの襲撃を破ったのだ。
「……もしくは、もっと別の目的があったか」
 そう言って、フェリオはセリオルを見遣った。だが、長身の魔導師の様子からは、何も読み取れなかった。彼はただじっと、エッラを見つめているだけだった。
 そうこうしているうちに、村にざわめきが戻って来た。気絶させた村人たちが、徐々に意識を取り戻し始めたのだ。
「いずれにせよ、早くこの村を離れましょう。これ以上説得しても、無駄でしょう」
 セリオルの決断は素早かった。必要な荷物は全て持ち出してある。
 各地の自治区領主たちを説得した時のように、幻獣を呼び出すことも考えないではなかった。圧倒的な神の威光は、少なからず効果はあるだろう。だがこの村の民はどうやら、ゼノアに心酔してしまっているようだった。幻獣を呼んだとしても、信じ込ませることが出来なければ意味が無い。
 確かに、とサリナは、兄の決断に従った。クロフィールやエル・ラーダやドノ・フィウメで、サリナたちが真の悪だと誰かが叫んだところで、その地の民はそれを信じはしないだろう。目の前にサリナたちがいて、そうと認めでもしない限りは。
 ざわめきが大きくなり始めた。エッラの周囲で地に転がっていた村人たちも、目を覚ましつつあった。
「皆! しっかりするんだよ! 悪魔の手先を逃がすんじゃない!」
 その小柄な体躯からは想像出来ないほどの大声で、エッラが村人たちに呼びかける。周囲の村人たちは身体を起こし、頭を振っている。カインが舌打ちをする。彼は相当苛立っていた。
「厩舎に行かなきゃ! アイリーンたちがいる!」
 ざわめきに逸る心を抑えず、サリナが叫んだ。仲間たちが頷き、彼らは走りかけた。
 その時、口に指を当て、アーネスが高い口笛を吹いた。それは鋭い音で村の中を飛んだ。驚いたサリナたちが思わず足を止める。アーネスは仲間たちに、片目を閉じて悪戯っぽい笑みを向けた。
 ほどなくして、地を蹴るチョコボたちの足音が聞こえてきた。
「オラツィオを呼んだのか、アーネス」
 カインは驚いた様子だった。獣使いである彼でも考えなかったことだった。
「軍式の召喚法よ。オラツィオは訓練されてるから、けっこう遠くでも大丈夫」
 だが聞こえる足音は、ひとつではなかった。間もなく呆気に取られる村人たちの間を風のように駆けて現われたのは、色とりどりの7羽のチョコボたちだった。それぞれの主人の許へ到着し、誇らしげに胸を張っている。
「はっはっは。賢いやつらだ!」
 さきほどまでの苛立ちも吹き飛んだか、上機嫌でカインは、ルカの背に飛び乗った。仲間たちもそれに続く。チョコボたちは主人を背に乗せ、その場で少し跳ねるようにして、その小さな翼を羽ばたかせた。チョコボが昂ぶっている証だった。クエーッと高い声が響く。
「行きましょう! こうなればのんびりしてはいられません。一気に森へ入り、ハイドライトを探します!」
「ちくしょう。俺の安眠を邪魔した罪は重いぜ!」
 興奮のあまり眠気など微塵も感じていないはずだが、カインはそう言った。こんな状況での冗談めかしたその言葉に、仲間たちは苦笑しながら、それぞれのチョコボの手綱を取った。
 エッラをはじめ、村人たちは急な展開に言葉も無く、ただ風のように駆け去っていくサリナたちの後ろ姿を見送った。

 月明かりはあったが、とても森の中まで照らすものではなかった。サリナたちはウンブラの村はずれで、チョコボから降りた。さすがに森の中までチョコボたちに乗って進むわけにはいかない。
「どうする? ここで待たせるのは危険だぞ」
 エメリヒの首を撫でながら、フェリオはそう言った。銀灰色のエメリヒは、その利口そうな目に不安の色を浮かべている。
「どうしたものでしょうね……こんな事態になるとは、思っていませんでした」
 盲点だったが、深刻な問題だった。野生の獣や魔物が徘徊する可能性のある場所だ。チョコボは不思議と他の動物に襲われることがほとんど無いが、その可能性が完全にゼロとは断言出来ない。元々エリュス・イリアの自然界に暮らしていたのだから、天敵などもいるはずなのだ。
「チョコボだけ帰すわけにもいかねえしなあ」
 カインのこの呟きに、クロイスが反応した。彼は呆れた声で言った。
「当たり前だろ、バカか」
 そしてこれに、カインがウンブラで鬱積した苛立ちを爆発させた。彼はクロイスを睨み、怒鳴った。
「あ? あんだとクロイスコラてめえ、もっぺん言ってみろ!」
「あーあー何べんでも言ってやるよ、このノータリン!」
「ノータリンっておい、えらく懐かしいじゃねえかそれ、ええっ?」
「なんだてめー懐かしいことに文句つけんのか?」
「おう、もっと斬新なやつをぶつけてこいよ! これまで誰も使ったことの無いような悪口をよお!」
「くっ……じゃあこれでどうだ! この……ノータリオン!」
「ノ、ノータリオン!? ああ、あ、新しいじゃねえかっ!」
「ふふん。どうだ、参ったかこのノータリオン!」
「くっ……!」
「何やってんのよ」
 かくして急遽持ち上がったノータリオン問題は、アーネスの拳骨――鈍くてかなり大きな音がした――によって、一瞬で鎮火した。カインとクロイスはきゅうと鳴いて静かになった。
「うふふ……どうしたものでしょうね、イルマたち」
 カインとクロイスのしょうもないやり取りに笑いながら、シスララも珍しく深刻そうだった。肩のソレイユはいつものことだから何も問題は無いが、チョコボのイルマはそうはいかない。イルマは足は速く体力もある優秀なチョコボだが、同時に繊細なのだ。
 皆が頭を抱えたこの問題は、しかし意外にもすぐに解決した。解決案を提示したのは、サリナだった。
「あ、そうだ!」
 ぽんと手を打って、サリナは顔を上げた。仲間たちの視線が集まる。
「モグたちに預かってもらえばいいんじゃないかな?」
 その提案に、仲間たちは驚きの声を上げた。
「なるほど、第二の世界樹ですか……確かにあそこなら安全ですね」
「名案だな、サリナ」
 セリオルとフェリオのツインブレインズにそう言われ、サリナは照れ笑いを浮かべて頭を掻いた。
「いやあ、それほどでも」
「はっはっは。サリナちゃん、そんな君にこの称号を差し上げよう――この、ノータリオンを!」
「緊張感を保ちなさい!」
 まるで何かを手渡そうとするかのように何も持っていない手を差し出したカインは、そのために空いた脇腹にアーネスの痛烈な掌底を叩き込まれ、激しく咳き込んで涙を流した。
「あ、でもそれだったらあれでいいんじゃね? ほらあの、ゼフィールでモグが使った……なんだっけあの、部屋作るやつ」
 苦しそうなカインを完全に無視して、クロイスが発案した。
「ああ、テント?」
「それそれ!」
 答えたのはフェリオだった。テントは、モーグリ族が使う魔法のようなものだ。大きな天幕を張り、その中で快適に寛ぐことが出来る。
「あれはちょっと目立ちすぎるかな……獣や魔物がいるかもしれないし、ウンブラの連中が追いかけてくることもあり得る」
「あ、そうか……」
 ゼフィールで見たテントの姿を思い出し、クロイスは納得した。内部は温度調節も可能でひんやりと涼しく、快適だったが、確かにあの大きな姿は目立つだろう。サリナたちがここから森へ入ったことを教えるようなものだし、チョコボたちも危険だった。
「やーい、却下されてやんの! へへーん」
「っせーなあこのボンクラリオン!」
「ボ、ボンクラリオン!?」
「だからやめなさいって」
 サリナは苦笑しながら、モグチョコを取り出した。モーグリとチョコボの絵が刻まれた、小さな羽の装飾のついた銀色の不思議な笛。それをサリナが吹き鳴らすと、演奏したわけでもないのに美しい旋律が流れ出す。
 光が現われた。そしてその中から、モグが登場する。
 だがいつものような元気いっぱいの登場ではなく、ふらふらと空中を漂った後、サリナにぽすっと衝突してゆっくり落下しそうになるという、見るからに眠そうな登場だった。
「モ、モグ、大丈夫!?」
「クポ……クポー……?」
「ご、ごめんね、モグ。寝てたよねっ」
「クポー……サリナクポ? どしたクポ〜ここどこクポ〜」
 仲間たちから笑いが起きる。サリナもつい微笑んでしまうのを隠さず、自分の腕の中でふわふわしているモグを抱き上げた。重さがあるのか無いのかよくわからないが、ともかくモグはサリナの顔の前に来た。
「ごめんね、モグ、お願いがあるの」
「クポポ……なにクポ?」
「あのね、私たちのチョコボを、第二の世界樹で預かってほしいの。今晩だけでいいから!」
「チョコボクポ……うん、いいクポ〜」
 モーグリとチョコボは仲が良い。モグも、これまで何度かサリナたちのチョコボと会い、ゼフィールでは少しの間とは言え世話をしたこともあって、すっかり打ち解けていた。少し目が覚めたのか、モグは7色のチョコボたちの間をふわふわと飛び、近寄ってはその嘴に触れた。
「クポ……」
 モグが最後に、アイリーンの嘴に触れた時だった。2者はほんの一瞬、視線を絡ませたようだった。モグが頷いた。アイリーンは何も反応しない。サリナは少し不思議に思った。それはまるで、アイリーンがモグに何かを伝えたかのような光景だったからだ。
 だがモグは、特に何も言わなかった。アイリーンから離れ、ひらひらと踊って、第二の世界樹へと通じる光の道を呼び出した。
「じゃあ、行くクポ〜」
 まだ眠い様子のモグに続いて、サリナたちもそれぞれのチョコボの手綱を引いて、光の中へ入った。
 セリオルはマナ・シンセサイザーなどのアイテムの保管関係でちょくちょく訪れているが、その他のメンバーにとっては久しぶりの第二の世界樹だった。暗い空間にマナの光がきらきらと舞い、マナの粒が生き物のようにたゆとうている。
「ん〜、やっぱいいな、ここは!」
 マナと獣の匂いに、カインがぐっと背伸びをするようにした。それを見たチョコボの王様、デブチョコボが豪快に笑う。その周りで、お付きのような数匹のモーグリたちがふわふわと踊っている。
「はっはっはっは! おう、久しぶりだなお前さんら! 今日はどうした、そのチョコボたちか?」
「ええ、他でもない」
 セリオルが進み出た。彼は何度もここを訪れているためだろう、デブチョコボとの話も早かった。デブチョコボはサリナたちのチョコボを預かることを快諾した。同じチョコボの仲間と時間を過ごせるのは、彼にとっても楽しいことのようだった。
「つってもまあ、ほとんど寝るだけか。はっはっは」
 デブチョコボはその翼を人間でいう腕のように上げ、頭を掻くような仕草をした。実に人間くさい動きで、サリナたちの笑いを誘った。
「初めまして、デブチョコボさん。シスララと申します」
 シスララが挨拶をした。サリナたちの中で唯一、デブチョコボには会ったことが無かった。デブチョコボはシスララに視線を向けた。シスララは柔らかく微笑み、軽くお辞儀をした。
「おう、よろしくな! セリオルたちには前に随分世話になってなあ。まあ話は聞いてるだろうが、それ以来かさばる荷物なんかを預かってんのよ。皆ももっと頻繁に遊びに来てもいいんだぜ?」
 シスララはデブチョコボの、あまりに人間じみた話し方や仕草が面白くて仕方がないようだった。もちろんサリナたちから聞いてはいたが、実際に目にしてみるとやはり不思議に見えた。長年生きたチョコボが、このような存在に変化するとは。
「では、お願いします。いつもゆっくり出来ずすみません。今も急いで向かわないといけないところがあって……」
「おう、気にすんな。任せときな」
 セリオルは礼を述べ、サリナに視線を送った。サリナは頷き、自身もデブチョコボに礼を述べて、仲間たちの許へ行ったモグを再び呼んだ。
「クポクポ〜」
 モグはくるりと回転し、腕を振った。光の道が現われる。口々にデブチョコボやモーグリたちに感謝の言葉を述べながら、サリナたちは光をくぐった。
 元の場所へ戻ると、目の前に黒き森が立ちはだかっていた。鬱蒼と茂る木々の影は漆黒で、夜にはなおさら黒き森の呼び名がしっくりときた。
 光が消え、あたりは月明かりが照らしていた。森に棲む夜行性の猛禽や魔物たちの声が、木々のざわめきの間から聞こえてくる。この森のどこかに、ハイドライトがある。幻獣研究所の影の部分。セリオルも知らぬその姿を、彼らはこれから探し出し、目撃するのだ。
 先頭に立ち、サリナは大きく深呼吸をした。父も関わったであろう研究。そしてゼノアが持つ闇に染まった秘密。その一端が、これから明らかになるかもしれない。恐ろしかった。まさか自分の父が……と思う部分もある。だが、彼女はエルンストのことを何も知らないのだ。
 隣を見る。セリオルは静かな目で、森を見ていた。その胸中を推し量ることは出来なかった。
「……行きましょう!」
 サリナが号令をかけた。7人は黒き森に、その足を踏み入れた――
「クエ」
 驚愕して、サリナたちは一斉に振り返った。
 チョコボが、そこに立っていた。陽光色の羽毛に、同じ色の嘴。ひとの背丈よりも随分高いところにある顔。黒い優しそうな瞳。正面からでもわかる、長く垂れた尾羽。その色は、全身の陽光色とは違い、純白だった。
「アイリーン……?」
 ついさっき、デブチョコボに預けてきたはずだった。サリナのチョコボ、アイリーン・ヒンメルは静かに、黒き森の入り口に立っていた。彼女はじっと、自らの主人であるサリナを、見つめていた。