第46話
太陽の光の降り注ぐ広場で、ティム少年は正座していた。彼は頭に大きなたんこぶをこさえていた。正座する少年の両隣にはモーグリがいた。モーグリは人型だが、脚がかなり短い。その短い脚を懸命に折って、正座している。その隣にも、更にその隣にも、モーグリが正座していた。 「ごめんなさい……」 ティムは目に涙を浮かべて謝った。今しがた、親友であり、兄のような存在でもあるアルトから大目玉を食らったところだった。彼は涙声で謝罪しながらも、柔らかな草のなびく地面をぐっと見つめ、悔しそうな表情を浮かべている。 「ク、クポ……」 その様子を見かねたか、ティムの右隣のモーグリが顔を上げた。しかしアルトの烈火のごとき怒りに燃える目で睨みつけられ、すぐにまた下を向いてしまった。 アーネスが小さく溜め息をついた。彼女は呆れたような口調で言う。 「モーグリが悪戯好きなのは知ってたけど、こんな悪質なことをするなんてね」 「ク、クポ〜……」 所在なさげに呟くモーグリとは反対に、ティムは顔を上げ、アーネスをキッと睨んだ。アーネスはそれに動じることは無かったが、やや意外な気がした。何か訴えたいことでもあるのか? 「……お前とは、もう口も利きたくない」 ぼそりと発せられたアルトの言葉が、ティムを突き刺した。ティムはびくりとしてアルトのほうを見た。武具店の少年は腕を組み、ティムに背中を向けている。頭から蒸気が出ているように見えた。 「あ〜あ。すっかり怒らせちまったな。無理もねーけど」 クロイスは頭の後ろで手を組んで草を蹴っている。彼も呆れているようだった。 「ア、アルト……」 「ク、クポポ……」 ティムの目からは、今にも涙が溢れそうだ。隣のモーグリたちは――目が細いのでよくわからない。 「ねえ、ティム」 サリナがティムの前にしゃがみこんだ。ティムは口を真一文字に結び、涙をこぼすまいと必死に堪えている。少年はかろうじて、サリナに顔を向けた。 「どうして、こんなことしたの?」 サリナの声は優しかった。ついさきほど頭ごなしに叱られた少年には、その声が救いの手に思えた。両目からぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。 「ううっ……うぐっ……」 耐え切れずに泣き出したティムの頭を、サリナは撫でてやった。彼女には、この目の前で涙を流す小さな男の子が、単なる悪戯であんなことをしたとは思えなかった。何か事情があるのではと、彼女は考えた。 「ゆっくりでいいから、話してみて?」 語りかけるサリナに、ティムは何度も頷く。モーグリたちが心配そうにこちらを見ていた。 しばらく涙を拭い続けてようやく落ち着いたか、ティムはゆっくりと話し始めた。 「モ、モーグリが、困って、たんだ」 泣きしゃっくりに手を焼きながら、ティムは懸命に説明した。 彼は言った。モーグリが困っていた。アルトとふたりで遊びに入った森で、お化けの大木に出くわした。ふたりは逃げ出した。しかしティムは、草に足を取られて転んでしまった。大木の枝がティムに伸びた。枝は優しく、ティムを抱え上げて立たせてくれた。転んだ時に出来た傷に葉が1枚落ちてきて、魔法のように癒してくれた。大木の正体は、モーグリたちが魔法で化けたものだった。 「モーグリたちは、マナが乱れてるって言ったんだ。僕たち人間のせいでマナが乱れて、この森にも魔物が出るようになったって。だから少しだけ、人間をこらしめようとしたんだって。怪我させてごめんって」 誰も何も言わなかった。サリナは言葉を失った。ゼノアの所業が、こんなところにまで影響を及ぼしていた。昼間は出ないはずの魔物が大量に出現したのも、そのためだったのだ。アルトとティムが魔物に遭遇しなかったのは、幸運だったと言えた。 「僕たちのせいで魔物が出たりして、モーグリが困ってるって聞いて、僕も手伝おうって思ったんだ」 「それで、一緒になって私たちを驚かせようとしたんだ」 ティムは頷いた。ようやく涙が止まった。 「迷惑かけて、ごめんなさい」 「クポ……」 ティムとモーグリたちは、同時に頭を下げた。 「じゃあ、ティムがさらわれたってアルトが思ったのは――」 アーネスは言いながらアルトを見た。アルトは顔を赤くしていた。力んでいるようだった。 「たぶん、僕がモーグリたちに抱えられた時のことだと思う」 つかつかと早足で、アルトがティムのそばに来た。ティムが見上げる。アルトはティムの腕を掴んで、強引に立たせた。足の痺れているティムは、たまらず変な声を上げてふらつく。つられてモーグリたちも、背中の小さな翼をぱたぱたさせて浮き上がった。 ティムの脳天に、アルトの手刀が勢い良く炸裂した。 「いでっ!?」 頭を押さえて目を白黒させるティムに向けて、アルトは腕組みをして怒鳴った。 「このバカ! 最初にちゃんと説明しろよ!」 「だ、だってアルト、話聞いてくれないんだもん」 「うるさい! 帰るぞ!」 ティムがぱっと顔を上げた。笑顔が戻っていた。 「うん!」 「クポ!」 肩を怒らせて歩き始めるアルトにティムが続き、その後ろになぜかモーグリたちが続こうとした。 「こらこらこら」 アーネスがふわふわと宙を移動する先頭のモーグリを手で止めた。ぽんぽんぽんと後続のモーグリたちが次々に衝突してくる。 「クポ?」 不思議そうに首を傾げるモーグリたちに、アーネスは溜め息をついた。腰に手を当て、彼女はモーグリたちに言う。 「あなたたちはマナの妖精でしょう? この森のマナを保つのが役目じゃないの?」 「クポ! そうだったクポ!」 「ついつい、ティムと遊ぶのが楽しくて、つられちゃったクポ〜」 「僕たちは森に残るクポ。さよならクポ〜」 空中に横1列に並んで手を振るモーグリたちに別れを告げて、サリナとアーネス、クロイスがアルトとティムの後に続いた。 「私もモーグリ、初めてでした。言葉を話すんですね」 「ええ。賢い種族なのよ、モーグリは。大昔からマナの精として存在してるらしいけど、実際にはただのんびりと暮らしているだけの平和な妖精ね」 「けど、ゼノアのやつのせいでその暮らしが脅かされてんだな……なんとかできねーもんかな」 「そうだね……」 3人は話しながらアルトとティムの後を追った。少年たちはまだ幼く、歩く速度も速くはない。危険な森の中へ再び到達する前に、容易に追いつけるかに思えた。 「危ないクポ〜〜〜〜〜!!」 後ろからモーグリたちの大声が聞こえた。 さっと振り返ったサリナたちの眼前に、太く無数の棘の生えた植物の蔓のようなものが何本も、地を走る獣のような速さで伸びてきた。そう認識した時には蔓はサリナたちを通過して、その前の少年たちに襲いかかった。 「なにっ!?」 声を上げながら、サリナたちは蔓を攻撃した。サリナは渾身の回転蹴りを放った。まともに受けた蔓が動きを鈍らせ、アーネスとクロイスが瞬時に剣と短剣で斬りかかった。地面に落ちた蔓は、しばらく蛇のようにのたうって、動かなくなった。 「うわああ!」 叫んだのはアルトだった。棘のある蔓がその身体に巻きついている。ティムは尻餅をついていた。 「アルト!」 サリナは少年を救うべく走った。遠心力を乗せた攻撃を仕掛けるも、蔓は上下に大きくうねってうまく回避する。 アーネスが跳躍し、全体重を乗せた斬撃を見舞った。しかし王都の騎士剣は蔓に食い込むものの、切断には至らなかった。さきほどよりも硬度を増している。それならばと、クロイスがマナの矢を放つ。炎のマナが蔓を襲う。一瞬動きが鈍ったが、蔓はすぐに大きくのたうって炎をかき消した。その動きに応じて、アルトの身体も大きく上下する。少年は意識を保っているのがやっとという状態だった。 「や、やめろー!」 勇敢にも、ティムは立ち上がって蔓に飛びかかった。懸命に殴って、捕らえられたアルトを解放しようとする。しかし巨大な蔓は、そんな小さな少年の身体などいとも簡単に弾き飛ばした。うめき声を上げて、ティムが地面を転がる。口の中を切ったか、血が流れた。飛んで来たモーグリたちが介抱する。ティムは無事だった。サリナは胸を撫で下ろした。 「来たれ水の風水術、結霜の力!」 アーネスが風水のベルを鳴らした。周囲からマナが集まる。マナは細かな氷の粒の嵐となって放たれ、蔓へと降りかかった。水のマナが蔓を凍りつかせていく。蔓の動きが止まった。 「やるじゃん!」 クロイスが跳躍し、蔓を上ってアルトの許へと走る。彼は短剣2本を盗賊刀に変形させ、両手で構えて渾身の力で斬りつけた。炎のマナストーンをセットした刃から、斬撃とともに烈火が噴出して蔓を焼く。蔓は地へ落ちた。 「サリナ! はやくアルトを!」 「うん!」 サリナはアルトに巻きついた蔓を引き剥がそうと、全身の力で攻撃する。しかし動きを止めた蔓は、その状態で固まってしまったかのように頑なに緩まない。黒鳳棍があれば。サリナはそう思わずにはいられなかった。自分の力を何倍にも増幅して放てるのは、黒鳳棍の強度があってこそだった。獣や鳥などの魔物は、素手でもなんとかなった。それはそれらの魔物が、柔らかい肉と毛皮を纏っているからだ。この蔓のように硬い相手には、サリナの突きも蹴りも、なかなか効果を表せなかった。 蔓が動きを再開した。ひと休みして活力を取り戻したかのように、それはさきほどよりも更に大振りにのたうった。巻きつかれたアルトは、意識を失ってぐったりしている。 その場から離れようとする蔓を前に、サリナはリストレインを掲げた。 「輝け! 私の――」 「待って!」 アーネスが制止した。不意を突かれ、サリナは瞬間的に思考を停止した。その隙に、巨大な蔓は素早く、風を切る速さで戻っていった。モーグリたちは為す術も無く、大騒ぎしながら蔓がアルトを連れ去るのを見送った。 「ア、アーネスさん?」 「なんで止めたんだ、アーネス!」 サリナとクロイスが抗議の声を上げた。しかしアーネスは、至って冷静にその声を聞き流した。 「あれは蔓だったわね、クロイス」 「ああそうだ、蔓だった。普通の攻撃じゃ埒が明かねえ強度のな」 「サリナ、蔓ということは、あの向こうにその本体がいると思わない?」 「あ……はい、そう、ですね」 アーネスは剣を鞘に収め、蔓の消えた方を向いた。モーグリたちが頭をつき合わせて、なにやら相談している。 「仮にさっきの蔓を破壊できたとして、次の蔓が襲来するのは目に見えてるわ。それより、追いかけて本体を叩きましょう」 「はい!」 「お、おう、そうだよな。いやわかってたぜ俺は。うん――っておい、ちょっと待てよ!」 短剣をしまって、クロイスは慌ててサリナとアーネスを追いかけた。 「僕も行く!」 立ち上がり、ティムがサリナたちを追う。振り返ったサリナは、にこりと微笑んだ。 「クポポ〜〜! 僕たちも行くクポ〜〜〜!」 そしてその更に後を、モーグリたちが追いかける。 「アーネスさん!」 広場を突っ切って蔓の消えた森へ入る直前で、サリナがアーネスを呼び止めた。仲間たちの足が止まる。 「カインさんが戻ったみたいです」 サリナの耳元には、小さな青白い羽虫のようなものが漂っている。スペクタクルズ・フライだ。アーネスは頷いて、懐から連絡用の打ち上げ花火を取り出した。それを地面に置き、留め具を勢い良く引き抜く。すると内部の火打石が作動して着火する。花火はぽんと音を立てて天高く舞い上がり、赤い煙を生んだ。 「あなたたち、テレポは使える?」 アーネスがモーグリに尋ねた。サリナは驚いた。テレポとは上級白魔法のひとつである。術者がかつて行ったことのある場所で、そこに術者の知人がいれば、そのマナを辿って瞬時にその場所へ移動することが出来る。 「使えるクポ!」 「モグテレポクポ〜」 サリナは首を傾げた。 「モグテレポ?」 モーグリたちは一斉に頷いた。サリナはアーネスを見た。しかしアーネスも、よくわからないという仕草をしている。 「モーグリがテレポを使えるっていう話は騎士団にいた時に聞いたことがあったんだけど。モグテレポっていうのは?」 「僕たちは、知り合いのモーグリがいるところならどこにでもテレポできるクポ」 「人間のテレポと違って、行ったことの無い場所でも大丈夫クポ」 「便利クポ〜」 「じゃあ、何人かはここに残ってちょうだい。私たちの仲間が来るはずだから。合流したら、すぐに私たちのいるところへ飛んでもらえるかしら?」 「了解クポ〜」 かくしてモーグリのうち何体かが広場に残り、残る何体かがサリナたちに同行した。あんなに小さな身体でテレポを扱えるなんて、妖精はすごいとサリナは思っていた。 よほど猛スピードで本体のところへ戻ったのか、あの巨大な蔓の跡は森の中にくっきりと刻まれていた。草が倒れ、獣道のようなものが出来ている。追跡は容易だった。ティムも懸命についてきた。 その間にも魔物が何度か襲来したが、いずれも瞬時に撃退された。アーネスは騎士隊長らしく、上手くサリナとクロイスの精神状態も把握して指示を出した。目の前でアルトをさらわれたことに焦りを感じがちなところに、タイミング良く打ち水を出すようにして落ち着かせた。彼女は極めて論理的に状況を把握し、そして的確な行動を伝えた。 「女版セリオルだなこりゃ」 「クロイス、失礼だよ!」 「へへへ。でも戦いの時の指示はセリオル以上かもな」 「あら、光栄だわ」 「うわ。聞こえてたのか。地獄耳」 「クロイス!」 獣道はあまり大きく曲がったりはせず、ほとんど一直線だった。蔓がわざわざ曲がりくねってアルトたちを襲いに来たとは考えにくいので、それは当然と言えた。 やがて4人とモーグリたちはその場へ到着した。広場から離れ、樹木が増えて鬱蒼とした場所だった。陽の光が少なく、薄暗い。そのせいか、やや肌寒くもあった。 いくつもの大木の陰に隠れるようにして、その醜悪な魔物は存在した。育ちすぎた、異常な大きさの薔薇。明らかにマナのバランスが狂った生物だった。何本もの巨大な薔薇が絡み合い、集合体となって1体の魔物を生み出していた。それはもはや植物の域を超え、常軌を逸した太さの幹の途中には、深く切れ込んだ口のようなものが見える。そこには鋭い牙が生え、不浄な唾液を端から垂らしていた。 「うげえ。なんだこりゃ」 「うう。こういうの苦手だな、私……」 「アルト!」 その巨大な薔薇が伸ばす蔓の1本に、アルトが捕らえられている。それを見つけ、ティムがアルトの名を叫んだ。しかしアルトは意識を失ったまま、目覚める気配が無い。 「これは、ブラッディローズクポ……」 モーグリがそう言った。その声は、やや震えていた。サリナたちは魔物から目を離さずに尋ねた。 「ブラッディローズ?」 「そうクポ。統一戦争の時、パスゲアがマナを乱したせいで生まれたことがあるって聞いたクポ。その時はウィルムたちがやっつけてくれたらしいクポ」 「でも、今はもうウィルムたちはいないクポ。どうすればいいクポ〜!」 モーグリたちは混乱していた。短い両腕で頭を抱えるようにして、空中をくるくると回る。 「いずれにしても、アルトを助けるのが先決ね」 そう言って、アーネスは剣を抜いた。クロイスは弓を構える。サリナもファンロン流天の型の構えをとった。ティムも足元の石を拾った。この幼い少年は、自分を助けに来てくれたアルトを救出しようと、必死だった。クロイスがティムの肩に手を置く。少年はクロイスを見上げた。弓を構えたクロイスはティムを見てはいなかったが、ティムの目には頼もしく映った。 ブラッディローズは捕らえた少年を茎の口へ運ぼうと躍起になったが、サリナたちがそうはさせじと波状攻撃を仕掛けた。クロイスの矢は炎や雷を纏って魔物を攻撃した。何本もある蔓はぐねぐねと動き回るため、狙いを定めにくかったが、狩人の少年はその動きを見事に見切って攻撃を成功させた。 しかし厄介なことに、この魔物は再生能力が半端ではなかった。アルトを捕らえた蔓を破壊することに成功して喜んだのも束の間、別の蔓が恐るべき速度で伸びて少年を絡め取り、そして破壊された蔓がすぐに再生してサリナたちに襲いかかった。 「んにゃろう、ズリいぞ!」 炎で焼き切った蔓が再生するのを見て、クロイスがうんざりして言った。 「無理クポ〜。ブラッディローズはひとの手には負えない魔物クポ〜」 「じゃあ、アルトは助からないの……?」 「無理クポ〜。どうすればいいクポ〜!」 騒ぐモーグリたちの真ん中に、突如白い光が生まれた。光は膨張していく。 「クポポ〜! 連れて来たクポ〜!」 光の中から、モーグリが飛び出してきた。どうやら広場でカインたちを待っていたモーグリが、モグテレポでやって来たらしい。 「カインさん!?」 「フェリオとセリオルはいるか!?」 期待の声とともに光のほうを見遣ったサリナたちは、その直後、理解不能な状況に硬直した。 「どこでいどこでい! アルトとティムはどこなんでい!?」 「我らが来たからには大丈夫でごわす! 今助けてやるでごわすー!」 光の中から現れたのは槍を構えた長身痩躯の戦士と、巨大な斧を構えた短身太躯の戦士だった。揃いの鎧を身に付けているが、絵に描いたようなでこぼこコンビである。 「あ、ビッグスとウェッジだ!」 「ああ。あれがそうなのね……」 アーネスが目を細めて、光の中から現れたふたりを見つめた。 「おうティム! おめえ無事かい!? アルトはどうしたんでい!?」 「ビッグス隊長! あそこでごわす! あそこでごわすー!」 「うるせえウェッジてめえてやんでい! おおう!? ありゃあアルトじゃあねえか!?」 「アルトでごわす隊長! アルトでごわす!」 ふたりは巨大な薔薇の魔物を前に気勢を上げている。その姿そのものは、戦士として見上げたものであると言えた。サリナたちは戦いを一瞬忘れて、その姿を見つめてしまった。 「いくぜいくぜいくぜい! アルトを助けるぜいウェッジ! ついてきやがれい!」 「了解でごわす隊長! 了解でごわすー!」 でこぼこコンビはそれぞれの武器を最上段に構え、魔物に突進した。そして襲いかかった巨大な蔓に打ちのめされ、地面に転がった。目を回している。 「てやんでいべらんめえ。てやんでい」 「痛いでごわす。やられたでごわす」 静寂の中に、魔物の発する不気味な声だけが響く。その場の全員が、モーグリを含めて頭を抱えた。 |