第74話

 極力光が漏れないようにと、窓にはカーテンが引かれている。サリナはせっかくの陽が遮られ、少ししか入って来ないことがやや残念だった。
 蜥蜴の魔導師との戦いから、丸1日が経過した。
 4人用の部屋に7人が集まっているので当然椅子が足りず、何人かがベッドに腰掛けている。彼らは部屋の中央に立つシスララを見つめている。シスララの肩でソレイユが小さく啼く。
 シスララが申し出たのは、アシミレイトの練習だった。昨日初めてのアシミレイトを行ったシスララだったが、あの時はカーバンクルからの働きかけがあったために、すんなりと実行出来たという感覚があった。今後は必要な時にいつでもアシミレイトが出来るようにと、彼女は幻獣の力を借りて戦うことの先輩である仲間たちに、協力を願ったのだった。
「初めのうちは、目を閉じてやるといい。自分の中心に集中する感覚で意識を集めるんだ。そうすると、幻獣と会話出来るぜ」
 一行の中で最もアシミレイトの経験が豊富なカインが、代表してシスララに教えた。それを聞きながら、サリナは思い返した。ロックウェルのスピンフォワード兄弟の家で、彼女も同じように、カインからアシミレイトを教わった。あの時は、こんなことになるとは思わなかった……。王都に行って、エルンストを助け出して、それで終わりのはずだった。
 サリナはシスララから視線を外し、静かに部屋を見回した。“瑞花の果実亭”は漆喰塗りの建物だが、中の壁には木の板が貼られていた。そのほうが外の熱を遮ってくれるのだと、セリオルが言っていた。
 随分遠くへ来たものだ。まさか閑掻の海を渡ることになるとは思わなかった。セルジューク群島大陸の中で、サリナの旅は完結するはずだった。
 これから先、まだまだ旅は続くだろうか。いつ、終わるのだろう。ゼノアを止めることが出来るだけの力は、いつになったら手に入るだろう。それとも、手に入れることは難しいのか――。
「おい」
 小さく聞こえたその声にはっとして、サリナはそちらに顔を向けた。クロイスが、シスララから視線を外さないままで彼女に声をかけたようだった。
「どうせまたしょーもないこと考えてるんだろ」
「しょ、しょーもなくなんて……」
 弁解しようとしたサリナに、クロイスは小さく息を吐く。クリスタルとの“共鳴”を始めたシスララからサリナへと目を移す。彼より2つ年上の少女が、今は随分小さく見える。
「いいから、前見ろよ。新しい仲間が頑張ってんだ。俺たちの――お前のために」
「――はい」
 サリナはシスララを見た。目を閉じ、クリスタルから溢れる純白の光に包まれる彼女を。
 心と身体の中心を泳ぎ、シスララは改めてカーバンクルと対面した。エメラルド色の毛並みに、額の赤いルビー。兎のような可愛らしい外見だが、エリュス・イリアの監視役を担う、碧玉の座の幻獣である。あらゆる魔法を跳ね返す力を秘め、またエル・ラーダの守り神として崇められる、神なる獣。シスララは、その名を呼んだ。
(なあに? シスララ)
 幼い少年のような口調。悠久の時を生きてきた神とは思えぬほど、その仕草も態度も可愛らしく、ともすれば勘違いをしそうになる。いずれにせよ、シスララはこの愛すべき幻獣と共に戦うことが出来る喜びで、胸を満たしていた。
 これから、よろしくお願い致します。シスララは、実際には出ない声でそう言った。それだけで、カーバンクルには伝わるようだった。
 深々と頭を下げるシスララに、カーバンクルは耳を揺らしてみせた。兎のように長く、しかし兎よりも長い毛に覆われた耳。
(うん、よろしくね。悪いやつをやっつけるんだよね。一緒に頑張ろう!)
 そう言って、カーバンクルは宙返りをした。純白のマナが散り、粉雪のように美しく舞う。
(ほら、行こう。目を開いて、シスララ。みんなが僕たちを待ってるよ!)
 エメラルドの毛を揺らして、カーバンクルが微笑む。純白の光が強まる。シスララは、まるで強い力に引っ張られるかのようにして、意識を急浮上させた。ぱちりと、彼女の両目が開かれる。
「響け、私のアシミレイト!」
 その声とともに、リストレインが変形を始めた。髪留めから、美しき竜の騎士を守る鎧へと。強い純白の光。その中で、シスララは再びリストレインの鎧を纏った。光が収まり、シスララは溢れんばかりの幻獣の力を手にした。ソレイユがその肩で、誇らしげな声を上げる。
「やるわねえ、シスララ」
 アーネスが賞賛の言葉を口にした。彼女はひと房だけ垂らした髪をいじっている。
「ありがとうございます、アーネスさん」
 にこりと微笑み、シスララはソレイユの額を撫でた。相棒の飛竜は、気持ち良さそうに目を閉じる。
「私なんて、それがちゃんと出来るようになるまで何日かかかったわよ。アーサーに飽きられたくらい」
「まあ。アーネスさんにも、苦手なことがあったんですね」
 顎に人差し指を当てるシスララ。その仕草に小さく苦笑しつつ、アーネスは頷いた。
「そりゃ、私だって人間だもの。克服したけどね」
「ふふ。そうですね」
「そうか、アーネスはアーサーからアシミレイトを教わったんだな」
 なるほど、といった調子で言ったのはカインだった。彼らはアーネスが国王からリストレインを渡された後、立場上具体的なアドバイスは何も出来なかった。あの時のやきもきした気持ちを思い出して、カインは頭を振った。
「ええ。突然のことだったから、驚いたわ」
「そうですよね。私も初めて知った時はびっくりしました」
 サリナはシスララを見つめる。純白の光を纏った、美しき戦士。竜と共に戦うその姿はまさに、竜騎士と呼ぶべき気高さだった。
「あの、皆様」
 その純白の竜騎士は、戸惑った様子で呼びかけた。
「これは、どうやったら元に戻れるのでしょう」

「そういえばアーネス、確か地のリストレインは王都の騎士家で保管されていると聞いていたのですが?」
 部屋での会話を思い出して、セリオルは尋ねた。
 ここは“瑞花の果実亭”の食堂である。沙羅の宮での食事ほど豪勢ではないが、家庭的なエル・ラーダ料理で、サリナたちは遅めの昼食をとっていた。
 アーネスはそう尋ねてきたセリオルのほうを向いた。彼はシスララが無事アシミレイトに成功して、ほっとしているようだった。
「ええ、そうよ?」
「ですが、あなたのリストレインは国王様から授かったのでは?」
「え?」
 アーネスがよくわからないという顔をしたのが、セリオルには意外だった。確か試練の迷宮を突破した後、国王からアーネスにリストレインが授けられたはずだったが。
「国王様が箱に入れたリストレインを、アーネスさんに手渡されましたよね」
 サリナが小首を傾げてそう言った。その言葉に、アーネスはやっと思い出したようだった。
「ああ、あれ? あれはね、国王様の演出だったみたいよ」
「演出?」
 よくわからないという顔をしたのは、今度はサリナだった。シスララを除く他の仲間たちも同様だった。シスララはそもそも、何のことだかよくわからない。
「そう、演出。私はよく知らなかったんだけど、地のリストレインは元々グランドティア家の所有だったの。お父様が家宝として大切に保管してたらしいわ。私たちが試練の迷宮に入っている間に、国王様がお父様を呼んで持ってこさせたそうよ」
「なんだ。王様もアーネスの親父さんも、アーネスが地のリバレーターだって知ってたのか」
 クロイスは、だったら初めからそう言ってくれればいいのに、という言葉を言外に含ませる口調だった。
「ええ。私は覚えてないんだけど、小さい頃に触ったことがあったそうなの。その時に光ったんですって、リストレインが。国王様がそれを覚えていらして、ピンと来たそうよ」
「それをアーサーに確認して、持ってこさせたわけですか」
「そういうことね」
 アーネスは米粉から作られた麺料理を箸で器用にひと口サイズにまとめ、口へ運んだ。ひき肉や彩り鮮やかな野菜、そして独特の香草を使った料理である。カインはその香りが苦手のようだったが、アーネスはお構いなしで、カインの隣で堂々とそれを食べる。
「うう。苦手だ」
「食べてるわけじゃないんだから、そこまで香らないでしょ?」
 カインは顔をしかめ、小麦粉とバターに様々な香辛料を混ぜ、羊肉や野菜をふんだんに使ったソースを米にかけた料理を、スプーンで大盛りにすくって口へ入れた。彼はその、カレーと呼ばれる料理がお気に入りらしかった。
「俺ぁ鼻がいいんだよ。だからわかっちまうんだ」
 カインは鼻声になりながら答えた。鼻を摘んだのだ。しかしそれではカレーの味がわからないので、彼は摘んでいた手を離した。するとカレーの香りに混じって、香草の香りが鼻に入ってくる。
「うう。ちくしょう、虐待だ」
「大げさねえ」
 涙声のカインを意に介しもせず、アーネスは再び箸で麺を挟む。彼女はセルジューク群島大陸育ちのはずで、そこではあまり箸を使う文化は浸透していないはずだが、その箸捌きは見事なものだった。
「あいつ、尻に敷かれるタイプだな、間違いなく」
「アーネスがカインを扱うポイントを押さえているのもありますね」
 クロイスとセリオルが小さな声でそんな言葉を交わすのを、サリナは楽しい気持ちで聞いた。カインはいつもアーネスから逃げ回るが、それは仲が良い証拠だと彼女は思っていた。今もふたりからは、険悪な感情は伝わってこない。
「ねえねえ、カインさんとアーネスさんって、仲いいよね」
 サリナはふたりには聞こえないように、小さな声で隣のフェリオに話しかけた。フェリオは炒めた米にひき肉や目玉焼き、魚介類などが載せられた料理を食べている。
「そうだな。今までなかったタイプだからかもな」
「……え?」
 フェリオの言葉に意味深なものを感じ、サリナは食事の手を止めた。彼女はシスララの勧めで、魚介類と野菜がたくさん入った、汁そばのようなものを食べていた。エル・ラーダではフォーと呼ばれるものらしい。
「今までなかったタイプ、って?」
「あれで結構モテるんだよ、兄さんは」
 フェリオは涼しい顔でスプーンを口へ運ぶ。彼は特に、甘辛く味付けされたひき肉と米を一緒に食べるのを気に入ったようだった。
「え、えええええええ」
 驚きの声を極力小さくすることに苦労しつつ、サリナは口をぱくぱくさせた。なぜだか顔が上気する。フェリオが口にしたのは、これまでにカインが何人かの女性と付き合いがあったことを意味していた。
「そりゃあ、兄さんも24だからな。俺も何人かには会ったことあるけど」
「そ、そっかあ。そうだよねえ……そっかあ」
 これまであまり仲間たちの恋愛事情を考えたことの無かったサリナは、いきなり明かされた事実に困惑してしまった。食事を口に運ぶのも忘れ、彼女は熱くなった頬に手を当てる。しかしエル・ラーダは暖かいので、それで顔が冷めはしなかった。
 彼女は横目でちらりとフェリオを伺った。黙々と料理を口へ運んでいる――と、彼は自分を見つめるサリナに気づいた。目が合う。
「ん、どうした?」
「なな、なんでもないっ」
 慌てる必要は無いはずなのに、サリナははたから見てもわかるほど慌てて、顔と手をフォーに戻した。箸で麺を挟み、口へ運ぶ。味がわからない。
 なぜか速くなる鼓動にどぎまぎしながら、サリナは考えていた。フェリオは、どうだったんだろう。これまでに、女の子と付き合ったことはあるのだろうか……。
「皆様、仲がいいんですねえ」
 おっとりした口調で、シスララが言った。彼女はサリナと同じものを注文した。
 “瑞花の果実亭”の若い主人夫婦は、昨夜シスララが来たと聞いて仰天した。だがサリナは、その場面を見ることが出来て良かったと思った。シスララは主人夫婦にもいつもの丁寧な物腰で応対した。対して主人夫婦のほうは、シスララが伯爵の娘であることはもちろん承知しているのだが、へりくだり過ぎることなく、お互いを尊重し合うように会話していた。
 その時、アーネスは言った。エル・ラーダの民たちは皆、汗水垂らして働いている。だから肌が日焼けしている。しかしシスララはそうではない。彼女は肌は白く、陶器のように滑らかだ。それでも彼女が民から反感を抱かれないのは、彼女がいつも民のことを気にかけ、民のために自分が出来ることを探しているからだ、と。そしてそれは、民と一緒になって働くことではない。それは領主の娘として民を導き、民の代表としてカーバンクルに踊りを捧げ、民の暮らしを良くするための法や制度の改正を王国に持ち込むことなのだ。
 そういう仕事に、シスララは多くの時間を費やしてきた。成功もあれば失敗もあったが、彼女のその思いをわかっているから、民たちは彼女を慕うのだ。
「時々、賑やかすぎる時もありますけどね」
 口元を僅かに綻ばせながらそう言ったセリオルの横顔を、シスララは見た。知性に満ち、確固たる信念を感じさせる横顔。
「私も、ついていけるように頑張ります」
「……いや、シスララ、あなたは今のままでいてください」
 今の騒々しさが更に増すことを少し想像して頭痛がしてきたセリオルは、こめかみを押さえながらそう言った。彼はやや辛口の米粉麺、フエと呼ばれる料理を食べていたが、その箸も置いた。
「……まあ、そんな」
 その隣で、シスララはどういうわけか顔を赤らめる。それに気づき、セリオルは不思議そうな顔をした。しかしシスララのほうは、そのセリオルには気づかない。セリオルは昨夜の、ラッセル伯爵との会話を思い出して、また少し頭痛を催した。
「やれやれ、どいつもこいつも頭が春になりやがって。緊張感を持てっつーの」
「誰の頭が春ですか?」
 うんざりした声でぼやいたクロイスに、セリオルが眼鏡を光らせる。
「なんでもねーよっ」
 ぷいと顔を背けたクロイスに、サリナが笑う。
「なんか、昨日と同じやり取りしてるよ」
「うっせうっせ。お前はそのエビでも食ってろよ」
「なによー」
 ぷうと頬を膨らませるサリナに苦笑しつつ、セリオルは食事の箸を置いた。
「これからの行動ですが、瑪瑙の座の集局点を回るということに関しては、みんな異論はありませんね?」
 仲間たちは一様に頷いた。異論を挟むはずも無かった。
「けどよ、集局点がどこかってわかってんのか?」
 頭の後ろで手を組み、カインが尋ねた。セリオルはそれに答えるように、懐から1冊の本を取り出した。
「クロフィールでエーヴェルト長老から貰い受けた書です」
「クリプトの書、とありますね」
 表紙を見たシスララが言った。かなり古びたもので、表の文字もかろうじて読み取れるか読み取れぬかというところだった。
「何の本だ?」
 フェリオは興味深げだった。あの長老がセリオルに託したということは、かなり重要な知識が詰まったものに違いない。
「かなり古い魔法文字で書かれています。解読にかなり時間がかかりました」
「長老は読めたわけじゃなかったのか?」
 意外そうな声のフェリオに、セリオルは頷いた。
「ええ。どうやら統一戦争の時代から受け継がれているもので、6将軍のクラエスが保管を命じられていたものだったそうです」
「やっぱり重要な書物、ってことか」
 フェリオに頷いて、セリオルはクリプトの書を開いた。古く傷んだ紙がめくられる。
「主には、各地の伝承やかつてエリュス・イリアで起こった出来事についてまとめられた書です。ただ断片的ではありますが、いくつかマナに関するものであろうと思われる記述があります」
「伝承ね……」
 アーネスが顎に手を当てる。歴史に造詣の深い彼女にとっても、クリプトの書は興味の対象であるようだ。
「確かに、創世記や黎明期の記録には幻獣たちのことが出てくるけど」
「より具体的な内容が記されているんです、これには」
「具体的な?」
 セリオルは頷き、書のある箇所を指で示した。
「例えばここには、アクアボルト自治区のあるアイユーヴ諸島での、“雷轟”と呼ばれる現象へのかつての信仰が記されています」
「アクアボルトで信仰? 冗談でしょう?」
 アーネスはうんざりした口調だった。無理も無いと、フェリオは思った。そして彼は兄を見た。思ったとおり、彼の兄は目を輝かせていた。
「アクアボルトってあの、カジノが有名なとこだろ? 行くのか? 行くのか?」
「兄さんには絶対に金を渡さないからな」
「なにーーーーーーー!」
 騒ぎ始めたカインはアーネスの手刀によって瞬時に沈静化した。アーネスは手を戻し、口を開く。
「その本、民俗学の文献なの?」
「そうですね。それに近いでしょう」
 セリオルは本を閉じた。懐にそれを戻し、彼は改めて仲間たちに向けて告げた。
「我々には他に手がかりはありません。この書と、あとは幻獣たちの感覚に頼る他は無いでしょう。彼らもある程度は近くでないと、他の幻獣を感知は出来ないようですから」
「ゼノアが例の、ブラッド・レディバグを飛ばしてる可能性もあるしな。急がねえと。カジノのためにも」
「カジノのためって何だよ」
 頭を抱える弟の隣で、カインは真剣な顔で瞳をきらりと光らせる。
「でも、ゼノアはどうして幻獣様たちの居場所がわかるのでしょう」
 シスララが疑問を呈した。それに答えたのは、サリナだった。
「ゼノアがいる幻獣研究所には、幻獣たちを探すための道具があるんだって。アシュラウルやイクシオンも、昔その技術を使ってカインさんとフェリオのご両親が見つけたんだよ」
「あら、そうなの……怖いわね」
 シスララはまだ、ゼノアと相対したことが無い。だがそれでも、彼女は仲間たちから聞くゼノアという男の常軌を逸した行動に恐怖を抱いた。幻獣を探すための技術など、彼女は何度も王都に出入りしているが、聞いたことが無かった。恐らく、本来は有益なことに使われるための技術だったのだろう。先端技術を使って破滅的な思想を実現しようとする男が、王都を支配している。その事実に、シスララは背筋を寒くする。
「うん。だから、私たちも急がないと。マキナでも聖獣の森でも、ゼノアに先を越されちゃったんだから。先回りしないと」
「サリナの言うとおりです」
 そう言って、セリオルは席を立った。仲間たちもそれに続く。カインは最後に残っていた肉を口に放り込んでから立ち上がった。
「伯爵に挨拶をして、エル・ラーダ港へ行きましょう。船が着いているはずです」
「あ、蒸気船ですね!」
 サリナが声を弾ませる。自分たちが自由に使える船。機動力が増し、世界を回ることが出来るようになる。それがサリナには嬉しかった。
「船、か……」
 そのサリナに対して、あからさまにげんなりした声を出した者がいた。彼の弟が彼の肩に手を置き、セリオルが彼の前に大量の薬包を差し出した。カインはがっくりと肩を落とした。